研究概要 |
1.合成ルートの開発 大環状架橋芳香族化合物は分子内に空間を有する構造を持つが、この空間に他の分子を包接する能力を持つことが期待され、また、特殊な反応の場を与えるので、新しい反応性が発現する物質として興味が持たれている。本研究ではスフェランド型カリックスアレーン(ヒドロキシ[1.0]nメタシクロファン類)の簡便な合成ルートの開発がKey Stepとなるが、tert-ブチル基を芳香環上の位置の保護基として用いる手法で行うことに成功した。 2.反応性・物性に関する研究 本研究で合成したスフェランド型カリックスアレーンの立体配座に1,1'-ジアリール結合がどのような影響を与えるか、核磁気共鳴スペクトル、赤外吸収スペクトルおよびX線構造解析等を用いて、溶液中・結晶状態の両方から調べた。予想通り、1,1'-ジアリール結合の回転障壁の為に、2つの水酸基は1,1'-ジアリール結合に対して反対側に位置しなければならないことがわかった。本結果から分子認識能に重要な立体配座の制御が可能となった。さらに、本化合物群の構造と芳香族求電子置換反応等の反応性との相関関係を解明し、分子識別機能に必要な種々の官能基の導入法を確立した。 3.金属原子・有機分子に対する包接機能に関する研究 例えば、スフェランド型カリックスアレーン類と種々の生体関連有機分子との水素結合にもとずく分子認識能を核磁気共鳴スペクトル法を用いて評価した。本成果は今後、本物質群を光学活性ホスト化合物へと変換することにより、不斉認識が十分可能であることを示唆している。 4.新規カゴ型化合物の合成法の開発 上記で合成したスフェランド型カリックスアレーン類を出発原料として、全く新しい型の物質群であるカゴ型炭化水素及びカゴ型ヘテロ環化合物を合成した。高選択的ゲスト分子認識において、ホスト分子の予備配向性が重要であることがわかった。
|