一般に遷移金属上の2つの有機基は還元的脱離をおこして炭素炭素結合を生成することが良く知られているが、ケイ素化合物ではほとんど知られていない。本研究ではアルキニル基を2つ持つケイ素化合物をジルコノセンエチレン錯体と反応させ、その後ヨウ素で処理するとアルキニル基の置換基がフェニル基の場合2つのアルキニル基がカップリングした生成物であるジフェニルジインが80%から90%という高い収率で生成することがわかった。この反応は分子内で進行することも確認できた。すなわち置換基としてフェニル基を持つものとトリル基を持つものの1:1の比で混合し反応を行ったところ、クロスカップリングした生成物は全く得られなかった。この反応の中間体を調べるため、ジルコニウムを含む錯体をヨウ素ではなく酸で処理するとシリル基を含む4員環化合物が得られた。重水素化反応によってこのジルコニウムを含む化学種はシリルを含む4員環とジルコニウムを含む4員環が縮合した化合物であることがわかった。置換基がアルキル基の場合はジルコニウムエチレン錯体との反応でエチレンが、1つの3重結合と反応してジルコナシクロペンテンが得られる。このときもう1つのアセチレンは未反応である。このジルコニウムを含む錯体を50℃に加熱し攪拌すると未反応であった3重結合がジルコニウムアルケニル結合に挿入反応を起こし、フェニル基の場合と同様シリルを含む4員環化合物が生成した。このときはシクロペンタジエニル配位子からプロトンを引き抜いて1つの炭素ジルコニウム結合をもった生成物に変化する。従って、この錯体にヨウ素を加えてももうジインは生成しない。
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