研究概要 |
無機層状化合物の層間に有機分子、有機金属分子、金属錯体を挿入し、層間での分子配向と電子状態を調べ、層間で特徴的なゲスト分子の物性および反応性を見い出した。 1.混合バナジル/ニオビルホスフェイト層間にフェロセン誘導体を挿入してその層間での分子の挙動を調べることによって、酸化還元反応により生成するバナジルホスフェイト層間化合物におけるゲスト分子の電子状態と配向の性状の基準を明らかにした。 2.3-メチルおよび3,5-ジメチルピロールが、重合をともなってVOPO_4層間に挿入されて層間化合物を形成することを見い出し、さらに、VOPO_4およびV_2O_5層間における4-アニリノアニリンの重合過程を明らかにした。 3.α-ジルコニウムホスフェイトの層間に置換キノリニウム、イソキノリニウムあるいはアクリジニウムカチオンを有する層間化合物を得た。その蛍光スペクトルおよび蛍光寿命を測定し、層間では溶液中に比べて寿命はやや短くなり、さらに、4〜5nsの短い寿命の成分も存在することを明らかにした。 4.種々の置換ビリジンあるいはジピリジル化合物を含んだV_2O_5層状化合物において、ピリジル窒素原子は一部プロトン化され、それはゲスト化合物の塩基性の強弱には依存しないことがわかった。プロトン化はホスト層での水分子の解離による電荷分離に依存しており、層間距離はプロトン化の増大とともにわずかに増すことを明らかにした。 5.いくつかのスピンクロスオーバー鉄(II,III)錯体をNaTMS粘土と反応させて、層間化合物を得た。そのESRスペクトルおよび磁化率の温度変化から、層間ではこれらの錯体は2〜3種類の環境を持ち、高スピン-低スピン状態変化は広い温度範囲において起こることがわかり、その状態変化における熱力学量を見積もった。
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