研究概要 |
1)N-X(X=S,Se,Te)型キレート配位子を含む金属錯体の合成と反応 2-ピリジンチオラト(pySと略)の硫黄原子をセレンに変えた2-ピリジンセレノラト(pySeと略)を合成し、そのCo^<3+>,Pd^<2+>錯体を合成した。2-ピリジンセレノラトとエチレンジアミン(enと略)の混合配位子コバルト(III)錯体の一連を合成、単離し、この配位子の性質を対応する、2-ピリジンチオラト錯体と比較検討した。[Co(pySe)(en)_2](ClO_4)_2の単結晶X線構造解析をし、セレンのトランス影響の大きさを決定した。対応する硫黄のトランス影響に比べて少し大きいことがわかった。またこの結晶は自然分晶していた。また[Co(pyS)_3]はmer構造の錯体のみが得られるが、今回合成した[Co(pySe)_3]はfac構造のみが得られた。これは、硫黄とセレンの原子半径がセレンの方が大きいことやトランス影響の大きさの違いに起因していることが考えられる。また配位セレン原子の酸化反応も検討した。 2)カルコゲンのα-炭素のC-H活性化による錯形成反応 (2-ベンジルチオ)ピリジンにブチルリチウムを加え、硫黄のα位の炭素をアニオンに変え、この炭素の非結合電子対とピリジンによりキレート形成をした、パラジウム錯体を合成した。(2-メチルチオ)ピリジンについても、同様の反応を確認した。特にこの(2-ベンジルチオ)ピリジンの配位炭素は不斉になり、光学分割可能であり、現在これを検討中である。この配位子の硫黄も酸化可能で、不斉硫黄になりうるので、不斉源を複数持ち、その性質に興味が持たれる。
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