研究概要 |
光学活性なR(-)-α-メチルベンジルアミンを導入した光学活性ビピリジン配位子((-)-tmdcbpy)を含む様々な新しいキラル銅(I)錯体、[Cu((-)-tmdcbpy)(PPh_3)_2]^+1,[Cu((-)-tmdcbpy)(P(C_6H_4-SO_3-m)Ph_2)_2]^-2,[Cu((-)-tmdcbpy)((+)-diop)]^+3,[Cu((-)-tmdcbpy)((-)-diop)]^+4などを合成し,それらを用いて昨年度に引き続いて[Co(edta)]^-の不斉光還元反応を行なった。カチオン性の1を用いた場合、立体選択性は44%eeであったが、アニオン性の2を用いた場合、反応性、立体選択性、共に低下した。この結果は、[Co(edta)]^-がアニオン性であることから、出合い錯体での会合状態が静電反発により弱められているためと考えられる。又、これ迄明確になっていなかった反応機構についても消光剤に[Co(edta)]^-を用いた消光反応を行なって検討を加え、1による[Co(edta)]^-の光還元反応はdynamic quenching mechanismで、2によるそれはstatic quenching mechanismで進行することが明らかとなった。 更に、これらの銅(I)錯体を用いて、DMSO中酸素ガス共存下Co(II)塩(例えばCo(OAc)_2,Co(NO_3)_2など)とH_4edtaあるいはNa_4edtaから[Co(edta)]^-の光不斉合成に成功した。この反応はキラルルテニウム錯体では不可能であったことから、銅(I)錯体の特徴を示すものとして興味深い。この反応は、溶媒依存性が強く、DMSO中でのみ可能であり、DMF、HENPA、エタノールなど他のいずれの溶媒でも進行しない。又、H_4edtaとNa_4edtaで選択性が異なる事、(+)-tmdcbpyとdiop双方に光学活性点をもつ3では立体選択性が消失してしまうが、4では1に比べて更に立体選択性が向上することなどの興味深い結果が見られた。
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