研究概要 |
本年度はまず種々のペプチド銅(II)錯体を合成しDNAファイバーESRによる結合構造の検討をおこなった。その結果,ペプチド側鎖の種類,順序,および不斉によって結合構造が変化することが明らかにされた。特に,ジペプチド錯体においては,C末端側がかさ高いL-アミノ酸になると,D-アミノ酸に比べてDNA結合構造のゆらぎが増大し,逆に,N末端側にかさ高いD-アミノ酸がくるとDNA結合構造のゆらぎがL-アミノ酸にくらべて増大することを見いだした。またセリンやスレオニンを含んだ系では水酸基が水素結合によってDNA結合構造のゆらぎを著しく抑制していることが明らかにされた。また,過酸化水素存在下におけるジペプチド銅(II)錯体とプラスミドDNAとの反応においては,ヒスチジンを含んだ系は他のペプチド錯体にくらべて異なって塩基配列を認識していることがポリアクリルアミドゲル電気泳動により示された。以上の結果の一部はすで第44回錯体化学討論会(横浜)において発表し,さらに本年6月の第7回金属の関与する生体関連反応シンポジウム(浜松)および12月の環太平洋国際化学会議(ホノルル)において発表予定である。 つぎに,含ペプチド複合金属錯体の基礎となる,フェナントロリン-アミノ酸混合配位子)錯体,サリチルアルデヒド-アミノ酸シッフ塩基錯体についてDNAファイバーESRと分子動力学計算による解析を行ない,アミノ酸の種類によってDNA結合構造が多様に変化することを“International Conference on Bioradicals Detected by ESR Spectroscopy"(山形)および第44回錯体化学討論会(横浜)において発表した。フェナントロリン-アミノ酸混合配位子)白金(II)錯体については,自己相補配列オリゴヌクレオチドとの結合をNMRによっても検討し,結果の一部は“The 2nd Internatiolnal SPACC Symposium in Tokyo"(東京)において発表した。 現在さらに,大環状ポリアミン,フェナントロリン,サリチルアルデヒドシッフ塩基,およびポルフィリンとペプチドとの複合錯体の合成を行なっている。
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