研究概要 |
低分子錯体からマルチ銅酵素中のタイプ1銅への電子移動の反応機構研究の一環として、マルチ銅酵素中のタイプ1銅の酸化還元電位を求めた。還元剤としてフェロシアイオンを用い、適用量のフェリシアイオンを加えることにより系内の酸化還元電位を適当に調節し、タイプ1銅に特有な600nmの吸収を分光度計で測定し、ネルンストの式を利用してタイプ1銅の酸化還元電位を求めた。 Acremonium sp.HI-25より得られたアスコルビン酸酸化酵素(AOD(Acr))中のタイプ1銅の酸化還元電位は、pH7.0で352mVであった。またTrachy derma tsinodaeから得られたビリルビン酸化酵素(GBD(Trc))中のタイプ1銅の酸化還元電位はpH7.0で約540mVであった。この様に酵素中の銅イオンの酸化還元電位電位が大きく変化するのは、銅イオンに配位する配位残基の種類の差異(AOD(Acr);His,His,Cys,Met:GBD(Trc);His,His,Cys)によると思われる、AOD(Acr)の酸化還元電位pH5.3以下ではpH依存性を示し、その変曲点はpH5.3であり、関与するプロトンの数は1個であることが判った。pH4.0,pH7.0において、酸化状態で依存するAOD(Acr)の電子スピン共鳴スペクトルと吸収スペクトルを測定したところ、酸化状態ではタイプ1銅の配位構造は変化しない事が判った。それ故、pH5.3以下では銅が還元された際に、配位する残基の一つが銅イオンより離れプロトン化している事が判った。酸化還元電位のpH依存性からその残基はHisであると思われる。
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