伝導機構と次元性の関係には理論的にも多くの関心がもたれている。このモデル物質として、低次元性をもち、高い伝導性が期待されるベンゼン環が一次元的に並んだ構造をもつ一次元グラファイトがあげられる。この物質に関しては導電性をもつ薄膜や、短冊状という非常に特殊な形状をもち、元素分析から一次元グラファイトと考えられる物質の合成が報告されている。これらの物質は、極めて大気中で安定であり、応用面からも大変興味深い物質である。本研究の目的は、一次元グラファイトの配向性膜の合成と、物性測定により伝導機構と次元性の関係をあきらかにすることである。 高い配向性を示す一次元グラファイト関連物質を合成という目的に関しては、現在、平成6年度に購入した赤外線集光型加熱炉、新たに製作した石英製反応容器を用いた合成装置を完成させ、一次元グラファイト関連物質の合成まで達成できた。すなわち、PTCDAの真空中、アルゴン雰囲気下の加熱によりそれぞれ、大気中で安定でかつ高い電気伝導度を示す薄膜、短冊状という特殊な形状をもつファイバーの合成に成功した。しかしながら高い配向性を示す試料の合成には至っていない。この点に関しては、昇温条件、アルゴンガスの流量、試料の配置、基板材料等を詳細に検討する必要があることがわかった。 試料の物性測定という目的については、4端子法に基づいた電気伝導度測定装置を製作し、薄膜の電気伝導度を測定した。また走査型電子顕微鏡を用いたファイバー形状の確認、薄膜表面の観察をすることができた。また透過型電子顕微鏡を用い試料の外形の観察のみならず、回折像を用いて以上電気伝導度の測定については、当初の目的を達成できたが、一方で、X線構造解析による配向性の評価、ラマンスペクトルの測定による反応生成物の同定を行う必要があることがわかった。 上記の結果の一部分をInternational Conference on Science and Technology of Synthetic Metals(ICSM)94'July24-29SEOULで発表した。
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