次元性は、物質の電子状態、電気伝導機構と深く関係しており、理論的にも、深い関心が寄せられてきている。特に低次元伝導性物質には、電荷密度波やソリトンなどの新しい電気伝導機構の発現が期待されている。この低次元性を確認し、さらに有効に活用するためには、マクロな大きさでの低次元性の実現が必要がある。しかしながら一次元性を示し、構造が明確に分かっているものは数種類にとどまっている。この研究の目的は、新しい一次元伝導性物質の候補としてベンゼン環が直線的につながった構造を持つ一次元グラファイトと呼ばれる導電性有機高分子の合成および、この物質の構造を明らかにすることである。この物質はリボン状のファイバーであることが報告されている。具体的には、一次元グラファイトと考えられているファイバー状の物質と、さらに関連物質と考えられ高い電気伝導度を示す薄膜状の物質について、合成と物性測定を行った。研究成果を以下に示す。 1.ファイバー合成に関して。 H_2Oがこの反応の促進するを見出した。 最適な合成条件(昇温速度、ガスの流量、到達温度、反応時間)を調べた。 他の原料(PTCDAでなくNTCDA)でもファイバー合成が可能なことを見出した。 多孔質フィルターを用いることにより、直径百nm程度の中空のファイバーを得た。 2.ファイバーの種々の物性を測定に関して ファイバー一本の電気伝導を測定。 透過型電子顕微鏡像の測定から薄膜の構造に関する知見を得た。 3.大気中で安定で高い電気伝導度しめす。種々の膜厚の薄膜を合成することができた。 4.電子線回折像からこの膜が、グラファイトとよく似た構造を持ちc軸方向にある程度配向していることがわかった。
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