本研究の目的は、超音波複屈折法により棒状ミセルの配向緩和時間を直接測定するとともに音場の強さを変えることにより棒状ミセルの安定性に関する新たな知見を得ようとするものである。今年度は光学系と測定用セルを中心に改良し複屈折を測定しやすいα-ヘマタイトコロイドで性能の検討を行った。その結果、以前に比べ2度弱い10^<-10>程度の複屈折信号の測定が可能となった。また、現装置では、0.1msecまでの配向運動の測定が可能であることがわかった。平行して、n-tetradecyltrimethylammonium salicateを精製し棒状ミセルを合成し、粘度測定及び光散乱測定により、添加塩0.1MNaSalでは流体力学半径約100nm、棒の全長1000nmの棒状ミセルを得た。この試料について超音波複屈折信号を測定したところ、棒状ミセルの複屈折は10^<-10>程度であることがわかった。データ処理に工夫を加えて得られた複屈折信号は、単純な単一緩和を示す減衰信号ではなく、ある周期をもって減衰することがわかった。この原因の一つである超音波信号の安定性及びセル内の音の強度の変化を調べるために今回購入したスペクトロアナライザーを使用した。その結果、現装置での音場の乱れは少なく、超音波直進流の影響はほとんど無視できることが明かとなった。また、棒状ミセルと同様の現象が、DMF溶液中のPBLG(分子量28万)についても観測された。周期的な超音波減衰信号の原因は現在明かではなく、今後、装置及び試料について再検討するとともに音場におけ棒状ミセルの安定性についても検討する予定である。
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