研究概要 |
化学量論から予想される値より多量にイオン交換された銅イオン交換ゼオライト(モルデナイト型,ZSM-5型)を真空中873Kで処理した試料が,300Kで窒素分子を強く物理吸着することを見いだした,この性質は極めて特異であり,この物質はアンモニア合成触媒としても有効である可能性がある.本年は,一酸化炭素をプローズ分子として利用し,この試料の窒素の吸着サイトを検討した. 873Kで真空前処理した141%銅イオン交換ZSM-5型ゼオライトについて,一酸化炭素吸着後測定した赤外吸収スペクトルは2159cm^<-1>と2151cm^<-1>に吸収バンドを与える.これらの二つの吸収バンド出現は二種類の吸着サイトの存在を示唆する.また,473K真空処理により2151cm^<-1>の吸収バンドが消失し,この表面への窒素吸着により2295cm^<-1>に物理吸着した窒素による吸収バンドが出現すること,さらに,573K処理によって2159cm^<-1>の吸収バンドが消失するが,その後の窒素吸着によっても2295cm^<-1>のバンド強度は473K処理表面へ窒素吸着した場合とほとんど変化しないことがわかった.これらのことから一酸化炭素を吸着する二つのサイトのうち,より低温で一酸化炭素を脱離するサイト,すなわち,一酸化炭素との相互作用が弱いサイトへ窒素が吸着するといえる.2159cm^<-1>,2159cm^<-1>吸着バンドを示すサイトをそれぞれをmonomer,dimer状のCu^+種のサイトに帰属した.吸着熱測定の結果も吸着量が2cm^3g^<-1>までの,吸着熱の値が100kJmol^<-1>の領域と,吸着量が2〜5.6cm^3g^<-1>までの吸着熱の値が約80kJmol^<-1>の二つサイトの存在を示した.以上のことから300Kにおける銅イオン交換ゼオライトへの窒素分子の強い吸着は,試料を真空熱処理することによって形成されたアモルファスなdimer上のCu^+種と窒素分子とが強く相互作用することにより生じていることを明らかにした.また,水蒸気処理による交換性銅イオンの状態変化も調べた.その結果,873Kで真空前処理した銅イオン交換ゼオライト中で不均一化反応{2Cu(I)⇒Cu(II)+Cu(0)}が起こることを明らかにした.
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