(1)従来のTTF系有機合成金属の研究は、対称TTF誘導体を中心として展開されてきた。一方、非対称TTF誘導体は、超伝導体を与えるドナーが知られているにもかかわらず、その研究は対称TTF誘導体に比べ未開発な領域が多かった。この原因として次の問題点があった。(a)効率の良い合成法が確立されていない。(b)良質な単結晶の結晶育成が難しい。本年度の研究成果は、(a)の問題点の解決策として効率的なノン-カップリング反応の開発に成功し、(b)の問題点の解決策として、制御電流法を用いれば、良質な単結晶が得られる場合があることを見い出したことである。 (2)新たに開発したノン-カップリング反応により、以下に示す新規TTF誘導体の系統的合成に成功した。さらにこれらのドナーの内、DHTTF誘導体、DSDTF誘導体、TTF-DHTTF誘導体を用いて結晶育成を行った結果、金属的性質を示す電荷移動錯体を数種類見い出した。
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