平成6年度において、合成したアミノ糖を側鎖に結合した高分子膜、すなわち、クロルメチル化ポリスルホン(CM-PSF+AGP)膜、クロルメチル化ポリスチレン(P-CM-St+AGP)膜、ポリメチルメタクリレート(PMMA+AGP)膜、クロルエチル化γ-メチル-L-グルタマート(CE-PMLG+AGP)膜を用い以下の実験を行った:(1)膜中の水の構造、すなわち、凍結水(Wf)、非凍結水(Wn)の定量を差動操作熱量計(DSC)を用いて行った。(2)これらの膜内に取り込まれた単糖類の溶解度をDSCを用い、その凝固点降下より定量的に決定し、光学異性体であるD体、L体の膜への溶解性の違いを明らかにした。(3)二室型透過セルを用い単糖類の透過係数を決定した。(4)D体、L体よりラセミ混合溶液を作り、その光学分割の分離係数を測定した。(5)糖鎖を有する制ガン剤および糖鎖を有しない制ガン剤のこれらの膜透過性を測定した。 高分子母体の化学構造により同一のアミノ糖の含有率でも、含水率(水和度)は異なる。類似した水和度(0.53〜0.59)の膜では、全水和度(Wt)に対するWf、Wnの割合、すなわち、Wf/Wn、Wn/WtはPMMA-AGP膜、CE-PMLG+AGP膜、P-CM-St-AGP膜の順であった。また、単糖類の溶解度係数を膜中の凍結水、非凍結水に対して独立に決定した結果、D体の溶解度の非凍結水に対する溶解度係数が特に大きく、これがD体/L体の光学分割に寄与していると結論した。D-グルコース/L-グルコースのラセミ体の光学分割の分離係数は約2.5がPMMA+AGP膜について得られた。糖鎖を有する制ガン剤である5-FUの誘導体であるFURの透過性はP-CM-St+AGP膜について、糖鎖の影響が顕著で会あった。
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