研究概要 |
前年度の研究を継続する立場から、2-パ-フルオロエタノートとL-(+)-乳酸とのエステルを合成し、分離・精製した。熱測定による相転移挙動の観察、誘電率測定の結果、強誘電性の発現は認められなかった。しかし、偏光顕微鏡観察において、スメクチック液晶と同定されているパ-フルオロアルキル-アルキレン メタクリレートに類似の組織が観察された。この点については現在、詳細を研究中である。 一方、液晶形成モデル物質としての立場から、引き続き今年度は、1,13-トリデカンジオールの単結晶構造解析を行った。その結果、結晶は斜方晶系に属し、格子定数はa=7.163、b=37.56、c=5.113Åであり、単位胞に4分子を含む事が明らかになった。分子構造上の特徴は一方の水酸基がトランス配座をとっているのに対して他方の水酸基はゴ-シュ配座をとっていることである。これは既に構造解析が行われた偶数炭素数系列の1,16-ヘキサデカンジオオールが両水酸基ともトランス配座をとる構造とは異なる点である。また、結晶構造上からは、1,16-ヘキサデカンジオールでは分子が「く」の字型に層を形成して配列していたのに対して、1,13-トリデカンジオールでは分子は層を形成し、層面に対して垂直に配列していた。これは液晶のスメクチックA類似の構造である。以上の結果は、シアトル(米)で開催された第17回結晶学国際連合会議で発表すると共に、Acta Crystallographica Cに論文として公表した。 本年度は本研究の最終年度のため、研究のとりまとめを行った。詳細はその冊子にゆずる。
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