本研究はC_<60>やC_<70>の官能基化に、光化学的に発生させた有機ケイ素活性種であるシリレンやジシレン等との付加反応やポリシラン類の光誘起電子移動反応を利用し、シリル化による異原子クラスターを合成して、新しい機能性クラスター化合物群の創製することを目的とする。これらはケイ素化学と炭素化学の融合による新しい化学を生み出すものと信じられる。1991年のC_<60>大量合成法の報告以来、物理化学者を中心とした構造、物性の研究が爆発的にスタートし、多くの成果が挙がっているが、有機化学分野の研究に於ては、その反応例からはC_<60>の化学反応性の一端を知るのみである。本研究は、フラーレン類の化学的分子変換において包括的な意味合いのある研究であり、世界に一歩先んじた成果が得られるものと期待される。 C_<60>とジシリラン、ジゲルミランによる新しいタイプの[4+3]型環状付加体の生成機構を解明し、本反応の有用性を確立した。さらに、本年は2年間に得られた研究成果の総括的な検討を試み、シリル化フラーレンの物性に関する知見を得る検討を行なった。即ち、酸化還元電位の測定によるレドックス性の解明や、電気伝導度の測定による新規炭素材料としての有用性を評価した。
|