研究概要 |
本研究では、まずスカンジウム元素のルイス酸性に着目し、まず高い触媒活性の期待できるスカンジウムトリフラートの合成を検討した結果、酸化スカンジウムにトリフルオロメタンスルホン酸を水溶液中加熱することにより調製できることを見い出した。 このスカンジウムトリフラートは、Friedel-Craftsアシル化反応の優れた触媒となることがわかった。Friedel-Craftsアシル化反応は工業的にも重要なプロセスであるが、一般に反応基質に対して化学量論量以上の塩化アルミニウムが必要であり、反応終了後の処理、および大量に副成する酸性ガス(通常は塩酸ガス)の扱いが大きな問題になっている。筆者らは、スカンジウムトリフラートを触媒として用いる芳香族化合物と酸無水物とのFriedel-Craftsアシル化反応について検討した結果、電子的に活性化されたアニソール、トリメチルベンゼンなどの芳香族化合物について1-20mol%の触媒を用いるだけで反応が円滑に進行することを見い出した。 一方、スカンシウムトリフラート、(R)-(+)-ビナフトール、三級アミンからキラルなスカンジウム触媒が調製され、アシルオキサゾリドンとジエンとの不斉Diels-Alder反応の優れた触媒として作用することも見い出した。これらのキラルなスカンジウム触媒について、そのユニークな構造を明らかにし、(R)-(+)-ビナフトールの軸不斉が水素結合を介して三級アミン部分に伝達され、高い不斉誘起が実現されているメカニズムを明らかにした。 一方、過塩素酸スカンジウムについても優れた触媒活性を見い出し、3-5mol%の過塩素酸スカンジウムの存在下、1-O-アセチル-2,3,5-トリ-O-ベンジル-β-D-リボフラノースにシリル求核剤を作用させると、対応するC-およびN-グリコシドが高収率かつ高立体選択的に得られることを明らかにした。
|