光学純度の決定法としては、施光度の測定が一般的であるが、近年では、高速液クロやガスクロまたはNMRなどの各種分析機器を用いる方法が実用化されてきている。しかしながら、これら方法には一長一短があり、たとえば生理活性物質など微量(1mg以下)成分の光学純度の決定には、施光度測定(100mg程度必要)やNMR(数mg必要)による方法は適さず、おもにクロマトグラフィー法が用いられる。クロマトグラフィー法は、微量物質(mgレベル)の光学純度の決定に優れているが、光学活性なカラムが高価であり、また試料に適したカラム、溶出条件を設定するためにかなりの時間を要するなどの短所がある。 以上のような方法にくらべ、光学活性な蛍光ホスト分子を指示薬とした蛍光測定による決定法は、従来不可能であったナノグラム程度の微量試料の光学純度の決定を可能とする高感度かつ、簡便な測定法として期待できると考えられる。本研究では、光学活性な蛍光ホスト分子を利用して蛍光法により極微量物質(ナノグラム程度)に対する光学純度の決定法の開発をおこなう。 光学活性な蛍光ホスト分子の分子設計と合成 蛍光法によりアミノ酸エステルの光学純度を決定するために、蛍光指示薬としてカリックス[4]アレンを基本骨格とする光学活性な蛍光ホスト分子の分子設計と合成をおこなった。ホスト分子の分子設計としては、アミノ酸エステルとの錯形成により蛍光変化が起こるよう、カリックス[4]アレン分子内のアミノ基配位部位末端にピレン2分子を導入した。合成された化合物はラセミ体として得られた。アミノ酸エステルに対してメタノール中で、ピレンのモノマー/エキシマー発光の強度比が変化する事から、蛍光指示薬としての有効性を確認する事ができた。 高速液体カラムクロマトグラフィーによる蛍光ホスト分子の光学分割 光学活性な蛍光指示薬として利用するため、合成化合物の高速液体カラムクロマトグラフィーによる光学分割をおこなった。カリックス[4]アレン型の光学異性体の分離例が少なく、適した光学異性体分離用カラムの選択に多くの時間を費やしたが、年度内中にほぼ満足のいくカラムの選定ができ、光学分割を達成することができた。
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