平成6年度は当初の研究計画に従い、種々の金属とオキシンスルホン酸(HQS)及びエチレンジアミン四酢酸(EDTA)との錯形成反応についてHPLCによる平衡論的並びに速度論的基礎研究を行った。 逆相系カラム充填剤であるCapcell C18 UG-120を使用し、アセトニトリル-水混合溶媒に臭化テトラブチルアンモニウムを添加した溶離液を用いて行った逆相イオン対クロマトグラフィーにおける金属HQS錯体の保持挙動の研究からは、以下のような興味ある結果が得られた。リン酸塩を含む移動相を用いると、他の金属イオンは単一のピークを与えたのに対して、A1(III)は2つのピークを示した。フォトダイオードアレイ検出器により得られた2つのピークの吸光スペクトルから、それらが異なる化学種であることが明らかになった。次いで、それぞれのピーク面積の比に及ぼす溶離液中のHQS濃度の効果から、錯体を構成する金属と配位子のモル比ならびに両錯体種間の相互転換反応の平衡定数を求めた。現在、低温で2つのピークの面積比及び高温でのピーク幅の移動相流速依存性から相互転換反応の速度定数の測定を行っている。また、キャパシティーファクターのpH依存性を解析することにより、Zn(II)錯体の生成定数の測定が可能であることを初めて明らかにした。 一方、金属EDTA錯体をモデル化合物としてイオン分配モデルに基づく生成定数の測定に関する検討を行った。使用を試みた5種類の市販親水性カラム充填剤のうち、ポリビニルアルコールゲルであるToyopearl HW-40Sが必要条件を満たしていることがわかったが、保持の小さい錯体では測定精度が著しく低下することが明らかになり、この点について現在改善を検討中である。
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