本研究では、種々の金属イオンのオキシンスルホン酸(HQS)錯体と無機陰イオンとの配位子交換反応の高速液体クロマトグラフィーによる平衡論的ならびに速度論的解析を行った。カラム充填剤としては、オクタデシルシリカとポリスチレンゲルを使用し、テトラブチルアンモニウムイオンをイオン対試薬として逆相イオン対モードでの金属錯体の保持挙動を検討した。 1.リン酸イオンあるいはフッ化物イオンを含む移動相を用いると、他の金属イオンは単一のピークを与えたのに対して、アルミニウムは2つ以上のピークを示した。また、アルミニウムも酢酸イオンや塩化物イオン存在下では他の金属と同様単一のピークとして溶出した。それぞれのピーク面積値に及ぼす移動相中のHQS濃度およびリン酸イオンまたはフッ化物イオン濃度の効果を解析して、いくつかのピークはHQSとこれら無機陰イオンを含む混合配位子錯体であることを明らかにするとともに、その組成を決定した。また、配位子交換反応の平衡定数を求めた。 2.上記の配位子交換反応の速度定数を、反応時間とピーク面積との関係を解析することによって求めた。 3.フッ化物イオンと移動相に添加することにより、配位子交換反応を利用してアルミニウムとカリウムを完全分離することに成功した。 4.現在までのところ、反応機構の解明までには至っていない。また、アルミニウム-HQS錯体よりも配位子交換反応速度の大きな錯体についての速度論的解析の研究は緒についたばかりである。今後はこれらの研究を展開して行く予定である。
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