研究概要 |
金属イオンの抽出を研究するためには、抽出試薬自身の分配平衡に関する情報が不可欠である。まず、ベンゼン・1-オクタノール、ベンゼン・2-オクタノンの混合溶媒に対して、広い範囲で混合溶媒の組成を変化させて、水相における安息香酸の解離が無視できる条件下で、安息香酸の分配比を測定し、水相の安息香酸の濃度に対する分配比の関係を解析することにより、それぞれの系における安息香酸の分配定数と有機相における安息香酸の2量化定数をもとめた。得られた安息香酸の分配定数と2量化定数に対して混合溶媒の組成との相関性を詳細に検討した。その結果、安息香酸の単量体に対して1-オクタノールまたは、2-オクタノン1分子が溶媒和する平衡(HA+S【double half arrows】HA・S、HA:安息香酸、S:オクタノールまたは、オクタノン分子)を考慮することにより、分配定数と2量化定数を定量的に説明できることを明らかにした。2-オクタノン・ベンゼン混合溶媒では、上述の溶媒和の平衡を考慮することにより、全領城において、分配定数と2量化定数を定量的に説明できたが、1-オクタノール・ベンゼン混合溶媒系では、1-オクタノールがO.5moldm^<-3>以上存在する混合溶媒では、上述の溶媒和の平衡から予想される分配定数よりかなり小さくなることがわかった。オクタノールには水酸基が存在するため、水素結合による相互作用も可能となり、オクタノンに比べて水の溶解度が増加し、オクタノールの合量の高い混合溶媒では一部の安息香酸に水和が生じることにより分配定数が小さくなると考えられる。オクタノール含量の低い混合溶媒では、上述の溶媒和の定数もオクタノン混合溶媒中よりも大きく、水素結合による相互作用の存在を示唆する結果も得てい 安息香酸の分配平衡への溶媒効果の結果に基づき、銅(II)イオンの抽出に対する,混合溶媒の影響についても順調に研究が進展している。
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