新規多足型固定相をシリカベースを基本に分子の大きさを識別できるキャビティ状空間を対象となるPAHやフラーレン類の分子形状、サイズに合わせてデザイン、合成した。対象溶質であるPAHやフラーレンの分子形状とサイズをまずMM2PPを用いて計算し、そしてそれから得られた分子に関する情報を基に、固定相のキャビティ構造をデザインした。この際分子間相互作用の基本にπ-π相互作用を考え、分子サイズの認識、形状の認識、 電子による分子平面性構造の認識の3つの分子認識を基本メカニズムとするものを考えた。そして有機化学的合成(分担者の永島が担当する)によりこの固定相を得た。この得られた固定相のキャラクタリゼーションをNMR(固体)、IR(拡散反射)により正確に行った後、LC評価を行った。実験室による固定相の合成は非常にスケールも小さく、目的の固定相は少量得られるのみであるから、カラムとしてマイクロカラム(内径0.53mm以下)を使用し各種化合物の保持測定を行い、あらかじめ推定した分子認識メカニズムの存在を確認することができた。上記の成果をもとに、7年度は多足型をさらに拡張した固定相合成を試み、より大きなPAH(例えばペロピレンPAH)やより高次フラーレン類に対する認識能力の大きな固定相を作り出し、メカニズムの解析を行った後、多足型以外の固定相のデザイン、合成を行う。新しいタイプの固定相としては、フェニル部位の電子密度に変化を与えるような置換基を導入し、その電子密度の変化による認識力の差を作り出すと同時に、置換基、フェニル基、アルキル基が作り出す空間(キャビティ)の大きさを変化させ、分子サイズと分子の有する電子密度の差を認識させ金属を含むフラーレン類の分離の可能性も追求する。また、フラーレンC_<60>をシリカゲルに化学結合したタイプの固定相の合成を試みクロマトグラフィー用の充填剤としての分子認識媒体への可能性も検討する。
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