購入したポテンショスタット/ガルバノスタットおよびパーソナルコンピュータを用いて、コンピューター制御イオン移動ボルタンメトリー測定システムを新たに構築した。本測定装置の導入により、液液界面イオン移動ボルタンメトリーおよび固体電極(グラッシーカーボン電極)を用いる通常のボルタンメトリーの自動測定および自動解析が可能となった。まず、10種類のケギン型モリブデン酸錯体を合成単離し、ボルタンメトリックな酸化還元挙動に対する溶媒効果の検討を行い、酸化還元電位が錯体の電荷に対して直線的に変化することおよび第一波と第二波の酸化還元電位の差が種々の溶媒依存性を示すことが、錯体イオンへの溶媒和エネルギーの差により生じることを明らかにした。また、18-モリブドピロリン酸錯体を新規に合成しボルタンメトリックに検討を加えた結果、アセトニトリル中でこれまで報告例のない4電子酸化還元を受けることを見いだすと共に、酸化還元挙動に対する水共存の効果をポテンシオメトリックに解明することができた。さらに、水-アセトニトリル混合溶媒中で生成機構の検討を行ったところ、18-モリブドピロリン酸錯体が一旦生成した後、自発的に欠損型錯体(15-モリブドピロリン酸錯体)に変換するという化学反応が起こることを明らかにすることができた。ついで、イオン移動ボルタンメトリーを水溶液中におけるケギン型モリブデン酸錯体の生成機構解明に応用し、11-モリブドゲルマン酸錯体を合成単離する事ができた。イオン移動ボルタンメトリーの速度論的研究により、欠損型錯体がケギン型錯体の反応中間体であることを明らかにした。イオン移動ボルタンメトリーによる欠損型錯体の各種金属イオンの捕捉及びその制御に対する検討を行った結果、4価と5価のバナジン、2価と3価の鉄など各種金属イオンの状態分析に有効であることが分かった。
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