本年度は平成6年度のバッチ系における検討で得られた知見をもとに、3価コバルトイオン(Co^<3+>)を用いる酸化分解前処理法をフロー系へと応用した。各種リン化合物の前処理過程およびモリブデンブルー吸光光度測定過程を結合しオンライン化したフローインジェクション分析(FIA)システムを開発し、諸条件について検討・最適化したのち実試料の分析へと応用した。その結果、以下のような成果が得られた。 1)FIAマニホルドは試薬使用量の低減のため試料および試薬を別々にキャリヤ-溶液に注入し合流させるいわゆるマージングゾーン法についても検討したが、試薬中の硫酸による乱反射に基づくと思われる高いブランクシグナルが生じたため、従来型の3チャンネル(キャリヤ-、前処理試薬、発色試薬)方式とした。 2)前処理コイル(1mm(i.d.)×5m)中に触媒として白金線を挿入することによりCo^<3+>による有機リンの分解速度を向上させるすることができ、常温下、約7分の同コイル中の滞留時間でも各種の有機リン化合物(リンとして1mg dm^<-3>以下)をリン酸イオンへと分解することができた。 3)縮合リン酸の分解率や各種有機・無機物に対する共存許容量はバッチ系の場合と同程度であった。また、河川水などの実試料の分析への応用でも、本法は公定法(JIS K0101)の全リン定量法と同程度の測定値を与えることができた。 4)FIAシステムの採用により、バッチ系の場合に比べ、使用試薬量の節約と分析時間(1時間に10-12試料の分析が可)の短縮をはかることができた。
|