アカパンカビのDNA修復欠損株のうち、遺伝学的な解析により組み換え修復に異常があると考えられている株を、プラスミドによる形質転換にともなう組み換え率を測定することで調査したところ、2つの変異株で相同組み換え率が著しくし低下していた。そのうちの一つ、mei-3は多くの変異原に感受性で、減数分裂時に異常があり、また、染色体の異常を起こしやすい。この遺伝子はニューメキシコ大学のグループによりクローニングされたが、ORFの判定を誤っていた。そこで我々はこの遺伝子のcDNAを単離し塩基配列を決定した。その結果、mei-3遺伝子は3つのイントロンを含み、分子量38kDの蛋白質をコードしていた。この配列は酵母のRad51によく似ており、両者の突然変異株の表現型もよく似ていることから、これらは細胞内でよく似た働きをしているものと思われる。もう一つの株mus-25株はMMSに高感受性であるので、これを指標にして遺伝子のクローニングを行った。連鎖群Vllのmet-7からun-10までの領域はすでにコスミドライブラリーによってカバーされているのでこれを用いてmus-25を取り出した。ゲノムおよびcDNAの塩基配列からこの遺伝子のコードする蛋白質は93kDの大きさで、酵母のRad54によく似た配列をもち、特に7つの部位からなるヘリケースドメインはよく保存されていることが明らかになった。mei-3およびmus-25はともに紫外線やMMS処理により転写量の増加がみられた。現在5'上流域の検索をおこなっている。
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