研究概要 |
本研究はイネ染色体上に現れるタンデム反復配列TrsAのマッピングと染色体上での存在様式の解析を目的としたものである。本年度の研究内容は以下の二点に要約できる。 (1)TrsAに隣接する配列(標的配列)の重複の普遍性の検討:これまでにTrsAとその隣接領域を含む4個のlocus(trsA,trsB,trsC,trsD)のクローン化と塩基配列の解析を行ない、その結果をもとにそれぞれのTrsAとその隣接領域の配列にhybridizeするプライマーを合成し、PCRを用いてO.sativa Japonica,O.sativa Indica及びO.glaberrimaの三系統について隣接領域の重複の有無を検討した。その結果、trsA1,trsA3,trsA4の各locusは上記三系統で保存されているにもかかわらず、trsA2 locusはインディカ型(IR36)でのみ保存性が認められた。TrsAが転移によって分散するという我々の仮説に基づけば、この結果はインディカ型のイネ染色体上のtrsA2 locusにはTrsAクラスターの挿入があったが、その他の系統では挿入がなかったことを示すと考えられた。 TrsAを含まない遺伝子座の解析:trsA1からtrsA4に至る4座の内、trsA2のみがインディカ型のイネ染色体に特異的に存在することに着目して、ジャポニカ型のイネ染色体DNA上のTrsAの挿入標的配列(trsA2)をクローン化し解析したが、意外にも標的配列自身が散在性反復配列であることが明らかになった。現在、この配列のゲノムあたりのコピー数の測定を行っている。ここで明らかになった配列は転移性遺伝因子の可能性があるが、既知のいづれのものとも異なるものであった。この結果はタンデム反復配列が転移性遺伝因子を介して分散することを示唆するものである。
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