筆者らは、近交系HNIの性決定遺伝子領域を近交系Hd-rRに導入したコンジェニック系統を用いて、これら2系統の間で制限酵素断片多型を示す多数のDNAクローンから、性に連関したクローンのスクリーニングを行い、反復配列である全長498bpのH05-110と役1700bpのシングルコピーの配列H05-5を得ることができた。 本年度は、第一にこれらのクローンの塩基配列を決定し、H05-5についてはPCR法でDNAの増幅が可能になった。その結果、Hd-rRのX染色体とY染色体との間で配列および長さが異なることが明かとなり、性染色体上のPCRマーカーが得られたばかりでなく、PCRでの性の判別も可能となった。 第二に、交配実験から性決定領域、性連関の体色遺伝子rとこれらのDNA遺伝子座(SL110とSL5)の間の遺伝子地図を作成することを試みた。XY雄では、59個体中、性決定領域、SL110、SL5の間で組替体はまったく得られなかった。一方、XX雌では、SL5-r間で84個体中1個体の組替体が、SL110とSL5の間では42個体中8個体の組替体が得られた。これらの結果は、SL5が性決定領域に強く連鎖していることを示すと同時に、XY雄とXX雌の間で組替率に顕著な差があることを示している。 今後は、性転換を利用してYY雄、XY雌での組替率を調べ、動原体や新たなDNAマーカーを含めたさらに詳しい性染色体の遺伝子地図を作成したい。
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