希少種ニホンジカの保全方法を検討するために、ツシマジカ、ケラマジカ個体群の遺伝学的性質を以下の要領で解析した。 (1)遺伝子試料の採集:ツシマジカについては平成6年11月から7年3月までの間に有害獣駆除で捕獲された36個体から組織標本を採取してDNAを抽出した。ケラマジカについては、生体捕獲が困難であったので、遺棄死体から得た骨片を材料としてDNAを抽出することを試みた。 (2)遺伝子分析1『種の再検討』:PCR法によって核ゲノムに存在するDRB3遺伝子の第2エクソン部分、GH遺伝子の第1エクソン部分を増幅して、PCR-RFLPによって異変を調べた、その結果、ツシマジカ、ケラマジカともにホンシュウジカとは大きく遺伝的に異なることが明らかになった。 (3)遺伝子分析2『個体群の多様性の評価』:RAPD法によって、ツシマジカ、エゾジカ、ホンシュウジカの4個体群の遺伝的多様性を測定した。その結果、band-sharing値で比較したところではツシマジカ<エゾジカ<ホンシュウジカの順に多様性が減少していることが明らかになった。 本研究によって、シカ個体群の多様度を比較する方法論が得られたと同時に、希少種個体群では遺伝的多様性が減少していることが実際に確認された。
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