非許容温度において、姉妹染色分体交換(SCE)を高発するチャイニーズハムスター温度感受性細胞周期変異株、tsTM4の変異を相補するヒト遺伝子、RNAポリメラ-II largest subnit(RPIILS)を分離したことを前年度報告した。FISH法により、RPIILS遺伝子はヒト染色体17p13.1に座位することが明らかとなった。RPIILS遺伝子をtsTM4に導入すると、tsTM4の変異であるDNA合成率の低下やSCEの異常形成が正常化することから、SCEの異常誘発は、S期におけるDNA複製の遅延により、DNA構造に変異が起きるためと推定された。しかしながら、RPIILSの突然変異がDNA複製の遅延やSCEの誘発にどのように関与しているのかはいまだ不明である。RPIILS遺伝子の突然変異部位を同定するために、まずヒトRPIILS遺伝子の塩基配列を決定したところ、既報の塩基配列と数ヵ所で異なっていた。さらに、チャイニーズハムスターRPIILS遺伝子の全塩基配列を決定した。tsTM4より異常RPIILS cDNAを分離し、ほぼ全長にわたって塩基配列を決定し、正常cDNAの塩基配列と比較したところ、塩基配列の異なる部位を数ヵ所同定した。この結果はRT-PCRにより増幅したcDNAを用いた解析であるので、現在ゲノムDNAを用いて突然変異部位の同定を行っている。 SCEの誘発に関与する遺伝子を分離するために、他のSCE多発細胞周期変異株tsTM18とヒト細胞との細胞融合により、ヒト微小染色体を保有する雑種細胞を分離した。Inter-Alu PCRにより、ヒト特異的DNA断片を分離し、FISH法で染色体位置を決定したところ、第4染色体長腕基部に位置した。現在このDNA断片を用いてYACクローンを分離中である。
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