1)道南地方において数次の調査を行い、合計167地点においてヤマトアザミテントウとその食草となるアザミ類の状況を記録した。同地域には少なくとも6種のアザミ類(マルバヒレアザミ、ミネアザミ、サワアザミ、オオノアザミ、タカアザミ、エゾノキツネアザミ)が分布していることが明らかになった。そのうち、ミネアザミは大野半島とその周辺域に分布が限られているが、他の5種は調査区域全体に分布する。ヤマトアザミテントウはミネアザミ、エゾノキツネアザミ、オオノアザミの3種類から採集され、豊富に自生するマルバヒレアザミとサワアザミからはマルバヒレの1例を除き発見されなかった。その分布は大野平野とその周辺に限られており、事実上ミネアザミの分布域と一致した。なぜ、複数の利用可能なアザミの内のただ1種を選ぶのか、あるいは、なぜ最も豊富にあるマルバヒレアザミを選ばないのかを、生理的、生態的な側面から解明することが、今後の重要な課題となった。 2)実験・観察用のアザミ類の移植も計画通りに完了した。さらに、昨年予備的に採集し、大学構内に移植した数種のアザミ類を用いて、フェノロジーの予備調査を行った。開花時期はエゾアザミ、マルバヒレアザミ、ミネアザミ、サワアザミの順であり、エゾアザミとミネアザミ、サワアザミとは開花時期はほとんど重ならなかった。 複数種のアザミを用いた成虫の選択実験によって、ヤマトアザミテントウはサワアザミを好まないことが明確に示された。一方、他のアザミに対する選択実験の結果は採取した葉の保存条件などによって変化し錯綜しているが、マルバヒレアザミよりミネアザミを幾分好む傾向があった。これらの点に関しては、幼虫の生存率調査と合わせて、次年度も引続き調査を行う。
|