1)前年度の分布調査では、エゾアザミテントウは狩場山系以北に優占するチシマアザミを、ヤマトアザミテントウは大野平野とその周辺域のみで優占するミネアザミを加害し、渡島半島に広く分布し、最も優占しているマルバヒレアザミからは1例を除きアザミ食テントウは発見されなかった。本年度の分布調査も前年のこの結果を裏付けるものであった。 2)エゾアザミテントウ(以下エゾと略記)とヤマトアザミテントウ(ヤマトと略)のチシマアザミ、ミネアザミ、マルバヒレアザミにたいする選好性と幼虫の発育状況を飼育条件下で調査した。エゾもヤマトもチシマアザミとミネアザミをマルバヒレアザミよりも好み、この傾向は統計的に有意であった。幼虫の生育もマルバヒレアザミ上では有意に低下した。 3)上記3種のアザミおよび北海道南部に比較的普通に見られるオオノアザミとサワアザミを北海道大学圃場内に設置した網室内に植え込み、そこにヤマトの越冬成虫を放して産卵過程と幼虫の生存過程を調査した。産卵は8割以上がミネアザミに集中した。また、ミネアザミとチシマアザミ上で孵化した幼虫はそれぞれのアザミを食べて生育したが、マルバヒレアザミ上で孵化した幼虫のほとんどは、摂食することなし、あるいはわずかに摂食した後にマルバヒレアザミを放棄した。 4)以上の結果から、渡島半島中部におけるアザミ食テントウの分布空白帯は、その地域に優占するマルバヒレアザミにたいするテントウの低い寄主適合性によって形成・維持されていると考えられる。
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