苫小牧、千歳、札幌、厚田、岐阜、和歌山にて調査を行ったところ、札幌以北では全てのコロニーが中間カースト型(女王が居らず、産卵は専ら中間カーストに依存)であったのに対し、千歳と苫小牧では中間カースト型と女王型(産卵は女王が行い、中間カーストに居ない)がほぼ半分づつ、本州ではほとんど女王型のみであった。但し、本州や四国でも山岳域で中間カーストが採集されたとの報告もあり、結婚飛行に多大なリスクを伴う寒冷地域で中間カーストが生産されていることは間違いないようである。 女王型15コロニーと中間型15コロニーについて産卵個体を人為的に除去しても、女王型から中間カーストが、また中間型から女王が生産されることはなかった。また、両コロニー型間で幼虫を交換したところ、雄は発生したが女王や中間カーストは全く生産されなかった。これらの結果は、1)中間カーストは補助的な産卵者ではなく、寒冷条件下で積極的に選択され、遺伝的にかなり固定された存在であること、2)中間型コロニーでは女王生産が、また女王型コロニーでは中間カーストの生産が抑制されていることを示唆している。 遺伝回析にPCR法を採用したが、他のアリで多型が報告されているものなど12組のプライマーを試したところ、全く多型を確認できなかった。そこでCAP-PCR法にてマルチプライマー8組を試したところ少なくとも3組で多型を確認した。血縁度測定には少なくともあと2組のプライマーが必要であり、現在その開発と取り組んでいる。 千歳個体群の女王型30コロニー、中間カースト型20コロニー、女王も中間カーストもいない孤児コロニー10について羽化直後の雄と雌の乾燥重量を測ったところ、女王型ではほぼ1:1だったが、中間カースト型ではやや雄に偏り、孤児コロニーでは全ての有翅虫が雄だった。個体群全体では、有翅虫の性比がかなり雄に偏っていることは明らかである。
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