浮葉植物でみられる換気の機能は、還元的環境にある根やそのまわりの土壌中の酸素条件を改善し、根の高い活性を維持することであると考えられてきた。ところが、換気によって葉の光合成速度も増加することを示唆する実験結果を得た。そこで測定方法の改良をさらに進めて実測値の信頼度をあげとともに、種々の環境条件下での気孔コンダクタンス、葉温、葉内および葉柄内炭酸ガス濃度の変化を同時に測定することを試みている。 これまでの予備的実験の結果、日本では鑑賞用であるスイレンNymphoides odorataが現在最も適した実験植物と思われる。学内の実験池で育てたスイレンの葉を用いて、光、湿度、温度条件を変えて光合成、蒸散、換気の相互関係を実験的に求めるための測定システムの構築と調整にかなりの時間を費やしている。なお、浮葉は葉の表に気孔が分布するため特殊な同化箱が必要であるが、ドイツ滞在中に試作した改良型同化箱が実用に耐えることがわかった。現在、得られた測定結果の有効性の検討に着手したところである。 測定システム構築や調整に重点をおいており、換気速度と光合成速度との詳しい関係の解明はまだ始まったばかりである。特に、蒸散速度の測定には既存のバイサラを用いているが、測定精度が問題となり、葉内炭酸ガス濃度の絶対値の推定には慎重な対処が必要である。
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