研究概要 |
浮葉植物でみられる換気の機能は、還元的環境にある根やそのまわりの土壌中の酸素条件を改善し、根の高い活性を維持することであると考えられてきた。換気によって葉の光合成速度も増加すると考え、スイレン属のNymphea odorata、N.alba,コウホネ属のNuphar luteaなどを用いて葉柄からの換気速度と葉身の光合成速度を同時に測定し、わずかな増加率であったがハスNelumbo nucifera以外で予想どうりの結果を得た。 さらにチャンバー内の空気圧力を高めて強制的に一定の速度で換気するシステムを構築し、換気速度と光合成速度の増加とは正の相関があることを確認した。換気速度を変化させると葉柄から地下部に送り込まれる空気の炭酸ガス濃度は速やかに変化した。この空気の炭酸ガス濃度は換気速度が充分速い場合でもかなりの頻度で1000ppmをこえることがあり、これは葉柄および葉身の空隙付近の細胞の呼吸のためと思われる。このこと自体は換気による光合成速度増加量の計算にはほとんど影響しない。しかし、光合成が盛んにおこなわれている葉の上部の柵状組織細胞近くの空隙および換気の主な通り道と思われる葉下部の大きな細胞空隙とでは、炭酸ガス濃度が大きく異なっている可能性を示唆するものである。
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