江戸時代に中国から日本に入ってきた金陵辺と呼ばれる東洋ランに、日本ミツバチの働きバチはもちろん、本来花蜜や花粉採集を絶対に行わないとされてきたオスバチまでもが頻繁に訪花し、その中にもぐり込み花粉の媒介を行うことが先年玉川大の佐々木らによって報告された。この現象はおなじミツバチでも同所的に採餌活動を行っている西洋ミツバチではまったく見られず、また他の昆虫が花粉の媒介をおこなっている事実も全く観察されていない。このようにこのランと日本ミツバチの間にはその送粉に関して、特異的で緊密な一対一の対応関係が成立している。 15鉢のランよりその花香を吸着剤に採取した。それを熱脱着法によりガスクロマトグラフ質量分析計に導入分析することにより、構成成分の同定をおこなった。また花香成分を各種の液体クロマトグラフィーにより分離精製し、生物検定を組み合わせることにより、活性画分の特定をおこなった。特に生物検定法については検討を加え、簡単でしかも結果がクリヤーに出るプラスチックバック法を新たに開発した。ペンタン-エーテル系の溶媒を使ったシリカゲルカラムの結果活性は100%エーテル溶出画分に存在した。臭素付加反応を使った官能基試験の結果活性は消失したため、誘引活性成分は二重結合を持つことがあきらかとなった。また硝酸銀シリカゲルカラムでもほぼ同様の結果が得られた。最も精製の進んだ硝酸銀カラム後のエーテル溶出画分のGC-MS分析の結果誘引活性成分候補としてリナロールオキサイドが浮かび上がってきた。野外で日本ミツバチが活動を開始する4月以降の同成分を使っての誘引試験の結果が待たれる。
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