研究実績は以下の通りであった。 1)挿核アコヤガイの植物プランクトン摂食量は秋、冬、春、夏でそれぞれクロロフィルa換算で、0.05、0.02、0.13および0.11μg/時間/貝重1gであった。なお実験に用いた挿核アコヤガイは上記季節の順に、貝令は、2年5カ月、2年8カ月、2年11カ月、3年2カ月で、貝重は97、115、106、98g/個であった。実験を行ったときの水温は現場水温と同じで、上記季節の順に、17、12、17、25℃であった。 2)未挿核アコヤガイの海水濾過量は、秋、冬、春、夏で、約5、5、7、17l/時間/1個であった。挿核貝では約13、8、8、17l/時間/1個であった。なお実験に用いた未挿核貝は上記季節の順に、貝令は、5、8、11カ月、1年2カ月で、貝重は14、21、33、43g/個であった。挿核貝の貝令、貝重および水温は1)と同じであった。 3)外洋の海水が内湾へ侵入することによって起こる植物プランクトンの増加(いわゆる「ポンプアップ機構」による植物プランクトンの増加)量を現場調査によって明らかにした。水深5mでは0.5μgChl-a/l(1994年8月8〜9日)の増加があった。 4)「ポンプアップ機構」により生産される植物プランクトンの量から、アコヤガイの植物プランクトン摂食量を差し引いた結果、アコヤガイが養殖されている海域では「ポンプアップ機構」以外の何らかの要因が植物プランクトンを増殖させていることが示唆された。これは「アコヤガイは植物プランクトンの現存量を摂食によって減少させるだけではなく、濾過海水を多量に作り出し、この濾過海水が植物プランクトンを増殖させ、結果的に“摂食圧緩和効果"を作り出している」という仮説を実証できる可能性が示された。
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