本年度に得た結果は以下の通りであった。 1.「ポンプアップ機構」により生産される植物プランクトンの量から、アコヤガイの植物プランクトン摂食量を差し引いた結果、「ポンプアップ機構」以外の何らかの要因が植物プランクトンを増殖させていることが示唆された。このことから「アコヤガイは濾過海水を多量に作り出し、この濾過海水が植物プランクトンを増殖させ、結果的に"摂食圧緩和効果"を作り出している」という仮説が導きだされた。 2.アコヤガイの濾過海水は植物プランクトンを増殖させ、濾過海水のPO4-PおよびNH4-Nの濃度が著しく高かった。 3.アコヤガイに濾過されていない海水にアコヤガイ濾過海水と栄養塩濃度が同じになるように栄養塩を添加し、栄養塩添加海水とアコヤガイ濾過海水の両者を用いて、植物プランクトンの増殖を調べた結果、アコヤガイ濾過海水で著しい植物プランクトンの増殖がみられた。このことからアコヤガイの濾過作用が、栄養塩を回帰させるだけではなく、栄養塩以外の増殖物質を産生していることがわかった。 4.アコヤガイが養殖されている内湾の一次生産に関わる要因の連鎖の一過程にアコヤガイの濾過作用が存在することが明らかになった。
|