寄生者はその棲み場所とエネルギー源を寄生に依存して暮らしている。もし、寄生者が寄生を激しく搾取するならば、自らみ破壊する危険性をはらんでいる。共生関係は、最初は寄生関係から出発したと言われている。それでは、寄生関係から共生関係へとどんな条件があれば進化できるのだろうか。寄生関係においては垂直感染が重要な因子である。垂直感染とは、寄生者が当該宿主の子に直接感染することである。垂直感染が経路である病気は軽く、他個体にランダムに感染していく病気ではその症状が重いという傾向がある。貧栄養の植物の汁を吸って生きている昆虫は、共生者として栄養分の再利用を助けるバクテリアを持っている。これらのバクテリアは、菌細胞という特別の細胞の中に収まっていることが多く、卵に感染することによって完璧に親から子に伝えられる。このような垂直感染が、緻密な相利共生の進化とどのように関わってきたかを分析するために数理モデルを作り、進化的に安定な戦略の手法を用い、宿主と寄生者の立場から解析した。 以下のような結論が得られた。垂直感染率が増大すると、寄生者は病毒性を減らして共生へ進化することがわかった。宿主の子どもに確実に感染できる垂直感染は、寄生者にとって有利なので寄生者はこれを増やそうとする。一方、寄主はこれを排除しようとする。この寄生者と寄主とのコンフリクトもモデルによって計算した。これによると垂直感染率がある値より小さければコンフリクトが生じるが、大きいならば両者は共生関係へ向かうことがわかった。この境界の値は互いの廃物利用の場合は低くなり、共生関係になりやすい。しかし、寄生者が増殖効率を上げたり、寄主が防衛効果を上げたりすると、この境界値は上がりコンフリクトのままであることが予想された。
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