本研究は、ブナ林の鳥類群集構造が各種個体の定着時にほぼ決定されるとの予測に基づき、毎年雪解け時に順次おこる各種の生息場所(オスのなわばり、メスの配偶者)選択とこれに影響をあたえる同種・異種間の相互作用を個体レベルで明らかにすることによりブナ原生林の鳥類群集の構造解明の糸口を見いだそうとするものである。 6年度には、長野県下高井郡カヤノ平のブナ原生林において雪解け時から予備調査を行ない、鳥類群集と生息場所に関する概況の把握を行うとともに、5ha弱の調査地を具体的に選定した。また、秋期には調査地を小方形区に区分し、これらの各頂点に目印を打つとともに、小方形区の各辺にそって調査ルートを整備した。これによって7年度の雪解け時から、本格的な調査を開始する準備ができている。この調査地内では、越冬している可能性のある4種に夏鳥の主要5種(いずれもなわばり性)が順次加わって繁殖期の鳥類群集が形成されていくことがわかった。また、雪解け以前には、樹木の根元が各種鳥類の重要な採餌場所になっており、雪解け・ブナの開葉とともに採餌環境が徐々、あるときは急激に変化していくらしいこと、このことに林内のギャップの位置が関係しそうなことが予想できた。鳥の捕獲・標識については方法上のめどがほぼ立ち、巣も一部の種については発見することができた。
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