研究概要 |
有毒アオコと共存することが知られている混合栄養型黄金色藻類Poterioochromonas malhamensisは有毒アオコ細胞を捕食し,消化して増殖する。アオコ細胞の捕食と消化は,長鞭毛による捕獲-長鞭毛の収縮運動による鞭毛基部への移動-Feeding cupによる捕獲-食胞内への取り込みと消化,という過程で行われることが,高速ビデオ撮影及び電子顕微鏡観察より明らかになった。また,培養実験により消化されたアオコ細胞より放出されたミクロシスチンの殆どは,分解されずに細胞外へ放出されることが判明した。湖沼水へのミクロシスチンのリ-クは,アオコ細胞のバクテリアによる分解のみならず,混合栄養型黄金色鞭毛藻類による捕食によってもおこることが示唆された。 イ-スト抽出液は,代表的なアオコであるMicrocystisを溶解する。M.viridisを検定の材料として,どの成分が溶解因子として作用しているのかCM-カラム,TLC,MS及びNMRを使ってを調べた結果,L-リジンであることが判明した。L-リジンは1ppmの低濃度でもMicrocystisの細胞を溶解し,かつMicrocystisにのみ特異的に作用することが判明した。霞ヶ浦に溶存する遊離アミノ酸は平均して0.5ppm程度であるが,季節によってはMicrocystis細胞の溶解,ミクロシスチンの湖水への放出に関与している可能性が示唆された。 タマミジンコMoina macrocopaに対する有毒Microcystisの影響を,様々なミクロシスチン濃度を有する培養株22株を使って調べた結果,ミクロシスチン量とLT_<100>値に明瞭な正の相関があった。しかし,タマミジンコを致死に導くミクロシスチン量は培養株から換算したミクロシスチン量と比較すると100倍も高い。このことから,タマミジンコに致死影響を及ぼす毒成分はミクロシスチンではないが,ミクロシスチンの合成と密接に関連している物質であることが示唆された。
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