研究概要 |
湖沼には様々な水生生物が存在する。有毒アオコの捕食者として,動物プランクトンや混合栄養型黄金色鞭毛藻,草魚(ハクレン等)がしられているが,両生類についての報告はない。中国において,食用ガエルであるRana grylioのオタマジャクシは,有毒アオコ(Microcystis)が発生する池で生育し,2-3週間かけてカエルとなるが,この間オタマジャクシの増殖とともに有毒アオコの濃度が減退していくことがわかった。このオタマジャクシを中国からとりよせ,実験室で有毒アオコの捕食実験を行った。オタマジャクシを飢餓状態にすると体重は10mg・body^<-1>・day^<-1>の速度で減少するが,有毒アオコを6〜9x10^6細胞/mLの濃度で,オタマジャクシに投与したところ,20mg・body^<-1>・day^<-1>の速度で体重を増加させた。また,有毒アオコのかわりにChlorella(クロレラ)を投与した場合は体重の増加は殆どみられなかった。オタマジャクシに有毒アオコを1.2x10^7細胞/mLで与えた場合,3x10^8細胞・body^<-1>・day^<-1>の速度で有毒アオコを摂取する。様々な濃度の有毒アオコ及び有毒アオコの水抽出液(毒素ミクロシスチンが2.768μg・mg^<-1>・dw^<-1>含有)を1週間オアタマジャクシにあたえた場合に,オアタマジャクシは順調に生育した。以上のことから,次のようなことが判明した。1)食用ガエルRana grylioのオタマジャクシは有毒アオコ及びそれが産生する毒素ミクロシスチンの影響を全くうけないこと,2)有毒アオコを餌として,オタマジャクシはカエルまで生長すること,3)オタマジャクシは有毒アオコを非常によく摂取し,有毒アオコの水の華を減少させること,4)中国で,有毒アオコを餌として育った食用ガエルは高蛋白質濃度をもつ美味な食物として珍重され,販売されており,それを食べた人間への影響はまだない。
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