形質転換型ランソウSynechocystis sp. PCC6803の光化学系Iサブユニットに関する以下のような研究を行った。 1:サブユニットK及びM遺伝子のクローニングとこれらの遺伝子を不活性化した変異株の作製 形質転換型ではないSynechococcus sp.のサブユニットK及びM遺伝子(このランソウでのみこれらの遺伝子の構造が明らかにされている)を放射性標識してプローブとして用い、ショットガンクローニング法により、Synechocystis sp.PCC6803のこれら遺伝子のスクリーニングを行い、幾つかの陽性のクローンを得、それらの塩基配列を決定したが、目的の遺伝子ではないことが判明し、現在再スクリーニングを行っている。 2:サブユニットD、E及びF欠失変異株を用いた生理・生化学的研究 ジーン・ターゲッティングにより構築されたサブユニットD、E、F各々の遺伝子のみが不活性化された光化学系I変異株を用いて、以下のような知見を新たに得た。 (1)光独立栄養条件下で、D及びE欠失変異株は、低温及び(強)光感受性を示した。 (2)電子顕微鏡下で、D欠失変異株のチラコイド膜構造の著しい変化が観察された。 (3)メチルビオローゲンを電子受容体としたときのD欠失変異株の電子伝達活性は、著しく増加した。一方、E欠失変異株のPSII活性は、著しく減少していた。 (4)D欠失変異株のチラコイド膜にはサブユニットCが存在しないことから、CサブユニットのPSI複合体における安定な構築にDが関与することを明らかにした。D欠失変異株は、野生株同様のNADP+還元活性を示したが、これは、サブユニットDが、フェレドキシン・ドッキング蛋白として重要であるという従来の仮説と矛盾するものである。 3:D、Eの両方のサブユニットの遺伝子を不活性化した突然変異株の作製 サブユニットD及びE遺伝子の両方を同時に不活性化した変異株の作製を何度か試みたが、未だ成功していない。
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