研究概要 |
アントシアニン合成の発現に関与しているmyb相同遺伝子のみを得るために,2,4-D存在下でアントシアニン合成を行っていない細胞から抽出したmRNAをテンプレートとしてOligo-dT30ラテックス上でcDNAを合成した。これに2,4-Dを含まない培地中でアントシアニン合成を行っている細胞から抽出したmRNAをハイブリダイズさせ,アントシアニン合成細胞および2,4-D存在下で脱分化状態にある細胞の両方で共通に発現しているmRNAを除去することにより,アントシアニン合成時に特異的に発現しているmRNAのみを集め,このmRNAからcDNAを合成し,λZAPIIベクターに導入し,subtracted cDNAライブラリーを作成した。これまでの研究からアラビドプシスのmyb相同遺伝子をプローブとしてニンジン核遺伝子ライブラリーから得た2種類のニンジンmyb相同遺伝子をもとに,すべてのmyb相同遺伝子において高い塩基配列の相同性を有するDNA結合領域を見い出して,この領域を切り出し,これをプローブとして,ここで作成したsubtracted cDNAライブラリーをスクリーニングし,アントシアニン合成時に特異的に発現しているmyb相同遺伝子をクローニングすることを行った。その結果12クローンが得られ,これらの制限酵素地図を作成して比較したところ,5種類のmyb相同遺伝子が得られたことがわかった。これまでトウモロコシにおいてはアントシアニン合成に関与するmyb相同遺伝子としてCおよびPlの2種類のみであると考えられていたが,ニンジンにおいてはアントシアニン合成時に発現してくるmyb相同遺伝子として少なくとも5種類あることになり,ニンジンにおけるmyb転写調節因子によるアントシアニン合成の制御機構は,これまでにトウモロコシで考えられていたものとは異なることがわかった。
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