研究概要 |
前年度にニンジン培養細胞におけるアントシアニン合成特異的subtracted cDNAライブラリーより得た5種類のmyb相同遺伝子について,本年度において,まずその全塩基配列を決定した。その結果,5種類のうち,2つは98%の相同性があり、おそらく同一の遺伝子であることが考えられた。myb相同遺伝子において高い保存性が見られるDNA結合領域については,これら4種類のmyb相同遺伝子の塩基配列について80%以上の相同性が見られたが,その他の部分については,塩基配列上でそれぞれの間の相同性は55%以下であり,またアミノ酸配列でみても70%以下の相同性であった。そこで,これら4種類のmyb相同遺伝子における特異的な塩基配列領域を切り出して,これをプローブとして,分化状態でアントシアニン合成もしくは不定胚形成を行っている培養細胞,さらにオーキシン存在下で細胞分裂を繰り返しながらアントシアニン合成もしくは不定胚形成を行っているニンジン培養変異株からmRNAを抽出して,ノーザン解析を行った.その結果,4種類のうち1種類はアントシアニン合成を行っている正常細胞株および変異細胞株で発現しているのに対し,もう1種類はアントシアニン合成を行っている正常細胞株でのみで発現していた。さらに残りの2種類はアントシアニン合成細胞よりも,不定胚形成細胞において強い発現が見られ,しかもその発現の強さは分化過程の上で異なっていた,これらのことから,ここで得られた4種類のmyb相同遺伝子は,分化特異的に発現しており,それぞれは全く異なった分化状態で発現している。すなわち全く異なった分化にかかわる遺伝子の発現制御を行っていることが示唆された。
|