研究概要 |
黄色植物は光合成の光捕捉にcarotenoidを用いる植物郡であるが、光捕捉に有効なcarotenoidはfucoxanthinなどごくわずかに限られている。この根拠を知る目的で、褐藻の光捕捉のfucoxanthin-Chl α/c蛋白のfucoxanthinを他のcarotenoidで置換した複合体を構築し、carotenoid chi αの間の励起エネルギーの転移に関わる分子構造の解析を行った。この蛋白は本来Chl α4分子,fucoxanthin4分子,Chl c1分子を結合しているが、この蛋白を完全に脱水しdiethyl etherで抽出処理すると蛋白に結合するfucoxanthin量をほぼ1分子にすることができた。この標品をlaury sucroseで可溶化し、fucoxanthinを添加すると、再結合が見られ、添加するfucoxanthin量が少ないときには結合したfucoxanthinの吸収極大は長波長型を示し、fucoxanthinからChl αへのエネルギー移動の効率も高く、fucoxanthin-Chl α間のエネルギー転移を再現することができた。この系でfucoxanthinのかわりに他のcarotenoidを添加したとき、β-carotene,zeaxanthinは蛋白とは結合するものの、Chl αへのエネルギー転移は示さず、一方、ハブト藻光捕捉系の19′-hexanoyl oxyfucoxanthinおよび渦鞭毛藻光捕捉系のperidininでは蛋白との結合は少なかったが結合した色素はChl αへのある程度のエネルギー転移を示した。この蛋白のfucoxanthinの結合部位はfucoxanthinだけに限定されているとはいえないものの、β-caroteneなどは蛋白にとりこまれてもその励起エネルギーをChl αへ転移を行わず、fucoxanthinのような非対称な構造がエネルギー転移に本質的であるが、その構造はfucoxanthinに限定されたものでないと考えられる。
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