研究概要 |
脱窒光合成細菌のペリプラズム局在ノリブデン酵素、dimethyl sulfoxide reductase(DMSOR)のフォルディング機構を調べた。 1、まず,in vitroで、精製DMSORを塩酸処理で補欠分子族のモリブデンコファクターをはずし、変性させた後のネイティブ構造へのフォルディングを調べた。変性タンパク質は未変性ゲル電気泳動で2本のバンドに分かれ、1本は完全還元型、もう1本はジスルフィドがランダムに形成されたものであった。この変性DMSORは不安定で、2時間後にはaggregationするせいか電気泳動上では認められなくなった。この系に大腸菌の分子シャペロンであるgroEL,groESを存在させると安定化され電気泳動上で認められた。この安定化作用はペリプラズム画分にも存在した。 2、groEL,groES存在下でdithiothreitol(DTT)を添加すると、ランダムに形成したジスルフィド結合は完全還元型へ変換され、かつ、変性DMSORはネイティブ構造へ変換された。 3、モリブデンコファクター欠損株から調製したスフェロプラストによって培地中に分泌されたDMSORは、ネイティブ構造とアンフォルド構造の二つが認められたが(J.Bact. 1994)、このアンフォルド構造は完全還元型であり、この分泌系では分子シャペロン様タンパク質も分泌されるせいか、このアンフォルド構造は安定で、groEL,groESを添加しても効果は無かった。 4、以上の結果から、ペリプラズムに分子シャペロンと同様の働きをするタンパク質があり、ペリプラズムはジスルフィド結合を形成するために酸化的と考えられているがむしろ還元状態で正しいフォルディングが起こること、細胞膜から分泌されるときのDMSORは完全還元型であることを推定した。
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