リン酸は全地球上で植物の生育を制限している栄養素である。トウモロコシをリン酸欠乏下(0.001mMPi)で生育させコントロール(0.5mMPi)と以下の項目について比較した。(以下の括弧内の数字はコントロールに対する%である)A)第2葉の光合成活性に及ぼす影響:播種後12日ではあまり影響を受けない(92)が、播種後、24日では著しく阻害された(5)。B)生育に及ぼす影響(播種後30日):地上部全体の新鮮重の増加は大きく抑制された(38)。C)クロロフィル含量に及ぼす影響(播種後30日):地上部全体のクロロフィル総含量は大きく低下した(31)。D)リン酸含量に及ぼす影響(播種後30日):地上部全体の全リン含量(TP)(5)、エステル化リン含量(EP)(12)、酸可溶性リン酸含量(ASP)(1)、は著しく低下していた。一方、若い葉身(第5葉)では、新鮮重当たりの、ASP(4)は著しく低下したが、EPは比較的影響を受けなかった(46)。また、古い葉身(第2葉)では、葉身当たりの、ASP(5)、EP(4)とも極めて低い値を示した。また、リン酸欠乏下で生育した植物の地上部全体のTPは実験期間中ほぼ一定であった。E)窒素含量に及ぼす影響(播種後30日):地上部全体の全窒素含量(TN)(38)、可溶性タンパク窒素含量(SPN)(23)、不溶性タンパク窒素含量(ISPN)(30)は大きく抑制された。しかし、若い葉身(第5葉)では、新鮮重当たりの、TN(115)、SPN(85)、ISPN(105)はあまり影響を受けなかった。古い葉身(第2葉)では、葉身当たりの、TN(42)、SPN(9)、ISPN(21)はいずれも大きく低下した。F)窒素含量とリン酸含量の相関:古い葉身に於ける窒素含量とEPの関係を検討した結果、EPが4μmmol/g・fw以下になると、窒素含量の低下が顕著になり、両者の間に高い相関が認められた。以上の結果から、リン酸欠乏ストレス下のトウモロコシでは、下位葉の老化が促進され光合成が阻害されると結論された。
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