葉緑体包膜は、これまで、葉緑体内の光合成に必要とする、あるいは、光合成で生成した化合物を細胞質との間で輸送する機能のみを持つと思われてきた。しかし、本研究で包膜にも電子伝達系が存在することが明らかとなり、その調節や触媒する電子伝達タンパク質の性質が興味の的となった。以下に本年度明らかにされた研究の成果は述べる。 1.人工リン脂質小胞膜に包膜タンパク質を組み込むことにより、小胞内部の還元剤が外部の酸化物を還元することから膜を横切る電子伝達を包膜タンパク質が行うことを証明した。 2.酸化還元滴定により、電子伝達能を持つ包膜タンパク質は4電子輸送体であり、1電子伝達体に解離する。これは少なくとも複数のタンパク質が電子伝達系を構成することを示す。 3.包膜の電子伝達に共役して細胞質側のpHがアルカリにシフトし、包膜内外の膜電位が形成されることを見い出した。このエネルギーは光合成に必要な炭酸イオンの輸送のために必要とされる。 4.包膜タンパク質を表面活性剤で可溶化し、種々のクロマトグラフィーを用いて生成するための条件を設定することができた。
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