加齢に伴う視床下部-下垂体-性腺系の機能的・形態的変化を、季節繁殖動物であるニホンザルを対象に調べた。1) 3歳から32歳までの乳児を保育していないメスニホンザル合計45頭から、それぞれ週1-3回の採血を行い、血中ホルモン動態の年齢変化ならびに季節変化を閉経現象に注目して調べた。その結果、10歳台のサルでは卵巣機能はよく維持されていること、排卵数の低下を伴った卵巣機能の低下は20歳前後になって現れること、高ゴナドロトピンを伴った典型的な閉経症状は、寿命とほぼ等しい20歳台後半になって初めて現れること、血中LH濃度は、閉経前のサルでは年間を通じて安定しているが、閉経後は繁殖期に高く、非繁殖期に低い明瞭な季節変化を示すことなどが分かった。さらに、エストロジェンのネガティブフィードバック作用に対する視床下部-下垂体系の感受性が加齢に伴ってどのように変化するかを調べるため、成熟期のサルと閉経期のサルにestradiol benzoate (EB)を投与した結果、視床下部-下垂体系は閉経後もほぼ正常であることがわかった。2)生後1日以内の新生児から28歳以上の老齢期に至る各年齢層の雌ニホンザル合計47頭の卵巣の組織切片を作成し、切片当たりの原始卵胞数や一次卵胞数が加齢とともにどのように変化するかを調べた。その結果、原始卵胞数は、加齢とともに等比級数的に減少し、16歳以降では切片あたり数個以下に減少すること、一次卵胞数や二次卵胞数は、性成熟期である4-16歳ごろまで多数存在するが、その後は徐々に減少し、20歳以降はほぼゼロになることなどがわかった。これらの結果は、卵母細胞の枯渇が卵巣機能の低下と密接に結びついていることをよく示している。
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