カンジダ酵母において、温度(37℃)感受性に高次倍数化細胞を培養に生ずる変異(Pld^<ts>)と、異型接合状態でアデニン栄養要求性変異(ade1)とをもつ株(SGF7-2)を作成し、このアデニン生合成遺伝子の乗った染色体が接合性の変異を起こしたことを検出する実験系を確立した。すなわちこの株は、異型接合(ade1/ADE1)のそのままの状態であればピンク色の集落を形成するが、もしade1/ade1の同型接合に変異すれば赤褐色の集落を、またもしADE1/ADE1の同型接合状態に変異すれば白色の集落を形成する。 (1)37℃の培養で生ずる高次倍数化細胞をミクロマニピュレータで単離し、集落形成させたところ、赤褐色や白色の扇状集落が10^<-1>という高頻度で生ずることが判明した。 (2)こうした扇状集落をそれぞれ培養し、パルスフィールド電気泳動で染色体DNAを分離し、ハイブリダイゼーションの実験を行ったところ、ade1あるいはADE1が異型接合から同型接合に変異したクローンでは、相同染色体間での不等乗り換えが高頻度で起こっていることが示唆された。これらの結果の一部は、J.Bacteriology誌(1994年)に発表した。 (3)制限酵素Sfi1によってADE1遺伝子座の乗っている染色体DNAを断片化し、染色体のどの領域で乗り換えが起きているのかを調べたところ、ADE1遺伝子に連鎖しているリボゾームrRNAの遺伝子(rDNA)のクラスターサイズが変化しており、反復配列に富んだrDNA領域付近で再配列が起きていることが示された。 (4)一方、アデニン遺伝子近傍での再配列による遺伝子量変化の可能性についても、アデニン遺伝子座周辺の制限酵素断片の大きさを調べながら検討を重ねているところである。
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