本年度、当初の予定通り、主に(1)テッポウユリ花粉母細胞の正常減数分裂、雑種ユリ(ブラックビューティ)花粉母細胞の異常減数分裂、ユリ根端の体細胞分裂と(2)オオバナノエンレイソウ花粉母細胞の正常減数分裂、高温前処理による異常減数分裂、根端の体細胞分裂における染色体と微小管を二重染色後共焦点レーザー走査蛍光顕微鏡を用いて比較した。その結果、(1)と(2)の双方の異常減数分裂において誘導される一価染色体の動原体微小管は一方向にしか形成されず、また紡錘体の極と結合していないものが観察された。同時に、第一分裂における紡錘体にはいくつかの異常が認められ、三極以上の多極紡錘体もあった。以上の結果は、減数分裂に特異的な動原体機能、すなわち姉妹動原体の不分離を形態的に実証したとともに、染色体(動原体)の形態が二極からなる紡錘体の形成に深く関与している可能性を示した。今後は、動原体微小管の形成を阻害することによってその機能を確かめる予定である。 一方、細胞質分裂が起こらないテッポウユリ胚のう母細胞の減数分裂における微小管構築を凍結切片を作製することによって予備的に観察した結果、花粉母細胞の場合と基本的には同じで、核膜由来の放射状微小管から紡錘体微小管への移行や核分裂後の姉妹核間の隔膜形成体が観察された。今後は、花粉母細胞同様、多種の場合や異常減数分裂における微小管構築を観察することによってその普遍性を明らかにする予定である。
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